インタビュー
2014.04.22
【ミニ白書】チーム制短期インターンシップを活用した中小企業社員向け人材育成プログラムの可能性
はじめに
~地域中小企業における人材育成の課題を解決するインターンシップ~
●企業における正社員に対する人材育成の実施状況
●人材育成・能力開発に関する具体的な課題

日常業務を行いながら、マネジメント経験を積める機会があることで中小企業の人材育成の機会になるのではないか。
資料:日本経団連「中小企業における人材の確保・定着・育成に関する調査結果」
中小企業と教育機関の関係性
●中小企業と教育機関における交流に対する今後の意向
中小企業でのインターンシップ受け入れについて、教育機関側は交流を推進したいと答えが割合が約75%と高かったが、中小企業は約30%と両者の間に大きなギャップがある。
●中小企業が感じる教育機関との交流に当たっての課題
中小企業と教育機関の連携に関しては、「そもそも交流に対するニーズがない」が最も多いが、「どのような交流方法があるのかわからない(交流方法)」「何について交流すればよいのかわからない(交流内容)」を合わせると最も多くなる。
中小企業にとって、メリットのある教育機関との連携方法が分からず、一般的なインターンシップを受入れても負担感を募らせている場合が多いと考えられる。
現在の日本におけるインターンシップの類型と現状
現在日本には様々な形のインターンシップがあり、目的によってさまざまな特徴、期間がある。インターンシップを受入れる際には、目的に応じた形のインターンシップを実施することが重要。
資料:平成24年度経済産業省 「産学連携によるインターンシップのあり方に関する調査」
現在の日本におけるインターンシップの類型と現状
若手社員の育成を意図してインターンシップを受入れる企業は約半数。
しかし、意図をもって受け入れない限り、インターンシップは「ボランティア、社会貢献」の場合がほとんど。
ほとんどの企業が、「採用」もしくは「社会貢献」として受け入れており、企業の人材育成を意図して設計されたインターンシッププログラムも多くない。
株式会社ピグマ『インターンシップに関する調査データ(2009年)』より http://www.pygma.com/corporate/data/index.html
企業・学生がwin-winの関係になるインターンシップとは
現在行われている企業側が社会貢献として受け入れているインターンシップではなく、受入企業・学生ともにメリットのあるインターンシップを設計するためには以下のポイントが必要になる。
新しいインターンシップの形(チーム制短期インターンシップの概要)
企業の日常業務を通した学生の学びを支援することで、社員の人材育成の機会として活用。
受け入れ企業、参加学生の双方が学びを振り返る機会を同時に設定し、受入担当者に対しても学びの機会を提供する。
平成25年度経済産業省研究委託事業「教育的効果の高いインターンシップの普及に関する調査」 より
チーム制短期インターンシップの実施体制図
企業への価値(若手幹部候補社員の人材育成能力向上)を実現するために、受入担当者向けの「目標設定塾」・「目標統括塾」を開催。インターンシップ期間中にも中間モニタリングを行い、日報の活用方法などを伝える。
さらに、受入企業の経営者を招き、担当した社員や社内にどのような変化があったのかを定期的に振り返る「カリキュラム研究会」を実施している。
導入事例:島崎株式会社(神奈川県横浜市)
30代の最年少社員が受入担当者となり、インターンシップを受入。当初後ろ向きだった社員が、周囲の社員の力を引き出し、体制の改善へ。
今回、首都圏でのSBI実施は初の試み。これまで以上に学生が覚悟を持ち(お金を払い、家を借り、長期休暇の半分を見知らぬ土地で過ごすなどを経て)参加したことで、結果的に受入企業側が本気で学生と向き合う心構えができた。
これまで、新しい人材が入ってくることが少なかった同社にとって学生たちの素直な疑問に答えたり、プレイベートな悩み相談に乗ることですらも、これまでの自らの働き方を顧みる機会となった。
学生たち3名は、毎日日報を記入する。時には枠内に収まらず、紙の裏面までびっしり書かれることもある。学生にとっては重要な振り返りの機会だ。
しかし、この日報の活用は学生だけに留まらない。SVは、毎日業務終了後に学生たちの日報を読み、一人一人に対してフィードバックコメントを記入。翌朝学生たちに返すことを3週間続ける。
SVにとっては、他人の振る舞いをきちんと見守り、適切に評価することの難しさ、重要性を体感することになる。さらには日報を通して業務の進捗管理などを行い、学生たちとのチームとして目標を達成できるか判断を行っている。こういったことを通して、マネジメント能力の向上を目指している。
受入企業の声
今回のインターンシップを通して自分は成長することができたのでは、と感じています。最初に社長から『うちの会社でインターン生を受け入れる、その担当SVを任せる』と言われた時は『自分には荷が重すぎる、責任を果たせないんじゃないだろうか』といった不安や焦りでいっぱいでした。そんな気持ちを抱えたまま学生との顔合わせのため高知へと赴きました。
ただ流されるままいにゃってきた自分の前に3人の学生が座りました。『こんな自分がSVで本当に申し訳ない』そんなことを思っていた自分に3人は、横浜でどんなことがしたいか、何を学びたいか、どうして島崎株式会社と相互成長したいのか、ということを説いて聞かせてくれました。
そんな3人の話を聞いているうちに自分の中で心境の変化がありました。『彼らはこんなに真剣に学ぼうとしているのに、自分がこんな調子ではいけない。彼らの期待に答えてあげたい』そう考えるようになっていました。
目標設定塾を終え、横浜に戻ってからはがむしゃらでした。インターン生を迎えるための土台作りの為、社員一人一人に説明したり関係する部署の人たちと打ち合わせをしたりと走り回りました。
それでもいざインターン生を迎え入れてみると予想外の出来事や不測の事態が起こり、予定通りにいかないことだらけ、不備だらけではありました。自分の至らなさを思い知りました。
でもその度に社員の皆が仕事を手伝ってくれたり、案を出してくれたりと助けてくれました。いい会社に入ったんだなと思いました(笑)。 その事に改めて気付かせてくれたインターン関係の皆様、助けてくれた会社の皆、何より楽しい3週間を過ごさせてくれた3人の学生さんたちには本当に感謝しています。
(島崎株式会社 第1期首都圏SBI担当SV 小山隆司氏)
(高知大学 教育研究部総合科学系 地域協働教育学部門 研究論集 Collaboration vol.4 2013 『首都圏SBインターンシップの開始ーSBIの新たな取り組みー(大石達良・福井美和)』より抜粋 )
僕はかねてよりインターンシップに興味がありました。しかし、一般のインターンシップは個人で経験するもので、目標もあいまいなため、不安がありました。一方、SBI(高知大学が実施するチーム制短期インターンシップ)はチームで活動すること、目標をしっかり立てることの2点を基盤に成り立っているところが魅力的で、参加を決めました。また、実習先を首都圏にしたのは、将来同じような環境で働きたいことと、様々な人や考え方に出会える可能性があると考えたからです
活動を始めると、先に述べたSBIの魅力の2点について、前者については3人一チームで参加することによって、考えを共有し、一人では得られないものを協力して試行錯誤しながら獲得できました。後者については、3か月間かけてじっくりと自分の目標と目的を明確にし、それにより行動や思考が密になりました。また、二つの魅力に共通することは、目標や目的をチームで共有して、みんなで協力しながら実行できたことです。そこに、SVによるフィードバックが加わり、自分たちを見つめ直すこともでき、自分たちの到達度はどこなのかを確かめることもできました。
インターンシップによる実習の感想を素直に述べるのなら、これだけ自分と向き合えた3週間は今までありませんでした。大学生として、社会人としての義務や責任、またその在り方を考えさせられました。
今回一番印象に残ったことは、「人とのつながり」です。これは、自分が仕事を体験した時や実習先の社員さんが働くのを拝見した時に感じました。そして業務以外で会社の方やチームの仲間と関われたことで一層強く感じました。また、このインターンシップを通じて強く印象に残ったキーワードが「自己実現」です。会社の方が社会で働く中で夢を持ち続けている、その字お世話になっております。実現のために今を生きているのだと、大学生である自分を重ねながら思いました。今後、SBIで学んだことを振り返りながら、大学生活を充実させたいと思います。(高知大学理学部理学科2年生(当時)河島匡兵さん)
(高知大学 教育研究部総合科学系 地域協働教育学部門 研究論集 Collaboration vol.4 2013 『首都圏SBインターンシップの開始ーSBIの新たな取り組みー(大石達良・福井美和)』より抜粋 )
他地域での導入事例①:(株)高南メディカル(高知県高知市)
次世代幹部社員の人材マネジメント能力向上を目的にインターン生3名と3週間、悪戦苦闘をするOJTプログラム。
高南メディカル宮本専務。「事業を育てるには人を育てるのが近道」これまで自分が担当でインターンの受け入れをしてきたが、今回は表に出ず、社内の2名の幹部候補生を受け入れ担当にすることで、組織全体の人材育成力向上を目指す。(写真はラ・ヴィータ社長宮地さまのブログより。) 最初の2週間は日常業務が続く。企画や提案などの非日常業務は8割を占める日常業務で培う信頼関係の上に成り立つことを体感する。
実習は3週間だが、プログラムは9か月にもおよぶ。受け入れ先は選べない上に単位も出ない。。「働くことや他者と協働することの意味」「自分の人生の目的や目標とそれを達成するために必要な力」というキーワードにひかれて応募。
今後、SBIは全国に同様のスキームで展開していく予定である。現在は、各地の状況に合わせた実施体制の整備や受入企業の開拓などを行っている。今後、多くの地域でこういったインターンシップの仕組みが広がっていくことが求められている。
【ケース1】

・愛媛県内の大学では、初年次キャリア教育の一環として、2014年度からSBIを実施予定。
・受入企業開拓や、企業・学生向けの事後研修は、地元のインターンシップコーディネート団体などと連携しながら実施していく。
・将来的には企業からの課金も視野に自立運営を目指している。
➢そのほか、山口などでも文部科学省『産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業』などを活用し、SBIの実施を模索している。
チーム制短期インターンシップは学生はもちろん、企業にとっても学び、人材育成の機会を提供することができる仕組みがつくられている。継続的に実施していくためにも、企業に対してメリットを提供することが条件となる。
よりメリットのある取り組みにしていくためには、企業に対する研修効果を高めるような機会を大学側が提供できることが重要である。