ETIC.横浜

インタビュー

2017.04.25

【インタビュー】地域貢献活動をはじめて感じる地元企業の”社内の変化”

地域貢献活動をはじめて感じる地元企業の”社内の変化”

地元とのつながりづくりに関心の高い中小企業経営者の方が増えているものの、どう取り組めばいいか、社員のみなさんにどう理解してもらうのか、悩む声もも多く聞きます。今回は、すでに地域貢献活動に取り組んでいらっしゃる経営者お二人に、取り組みの経緯や感じている可能性をお聞きしました。実は同じ学校の先輩後輩でもあり、地域に根付いたものづくり企業を目指す同志でもあるお二人。対談形式でお話をいただくことで、普段お伺いできない「本音」も聞かせていただきました。

対談

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株式会社スリーハイ 代表取締役男澤誠氏  
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●地域との接点をもちたいと思ったのはなぜですか?
僕たちは、2012年くらいから取り組みをはじめたのですが、きっかけは、2つあったと思います。1つ目は、都筑区の事業「メイドインつづき」認定企業の連携や活性化につながる提案をしたい。2つ目は、横浜型地域貢献企業として、何も貢献できてない自社が恥ずかしかった。「メイドインつづき」認定企業は当時、認定企業同士のつながりが薄く、展示会出展がゴールというものでした。理想は横のつながりを強化し、大田区に負けないものづくりブランドをつくれないものかと悶々としていたときに、偶然、ETIC.田中さんに出会い、インターンシップの制度を活用して地域との接点を探っていってはどうかとアドバイスをもらい、活動がスタートしました。

●具体的にどんな取り組みからはじめましたか?
地域貢献について考え始めた頃に、シンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志さんの本と出会いました。そこには「貨幣経済から自発経済の時代に入った」と書いてあったと思います。私たちの製品はBtoB。決して目立ったところに設置されたりはしない。だとしたら自分たちができることはただ1つ。自分たちの製品をもっと身近に感じてもらうために、工場に来てもらおう。もっと製造業の魅力を発信しよう。子供たちに楽しさを伝えて技術立国、日本を復活させよう。こんなことをやっているスリーハイを身近に感じてもらおう。これが地域貢献かどうかわからないまま、オープンファクトリーを開催しました。純粋に社会貢献のためだけでなく、自社利益のためという下心も多分にあったと思います。ライバル会社を引き離し、製造業で尖っていくためにも、なにかしないといけないという想いもありました。

●地域からの見られ方や関係はなにか変わりましたか?
はじめは怪しい人だと思われていました。(笑)まわりの人に、地域を変えるのは10年かかると言われていたので、時間をかけることが大事だと元々意識していました。必ずどこかでかえってくる、と信じてはじめたという感じです。

●社内でなにか感じた変化はありますか?
もちろん営業面での下心もありましたね。職場体験にきたお子さんのお父様から仕事をもらえるようになったり、、地域とのつながりで直接的に売り上げにつながったりすることもあります。ただ、地域貢献活動を通じた社会からの利益は、感謝を伝えたりいただいたりできることと、そこに自分たちがいる価値を感じられることだと思っています。お金ではない価値が社会を動かしている。それが経済をまわしていると思うんです。だからこそ、自分たちも、役に立てる存在でいたい。

●課題に感じたことはありましたか?
社員の巻きこみには苦労しました。当初、CSR宣言を社内でしたものの社員の理解を得られず信頼を失いました。地域貢献に熱心に取り組む株式会社大川印刷大川哲郎社長へ相談したりもしました。初代インターン生として参画してくれた相澤さんが翻訳者となって動いてくれることで、徐々に社内の理解が進んでいきました。
今ではみんな積極的に参加してくれています。

●今後の展望、感じている可能性を聞かせてください。
地域活動を進める中で、株式会社スープストックトーキョー遠山正道会長にアドバイスをいただいたことがあります。「見渡せば世の中困ったことだらけでしょ?困ったことを解決すればそれはその人にとって価値なんだよ。価値を1つずつ増やしていくことで社会がよくなるのだから。」と言われ、視野が開けた感覚を覚えています。今は、自分たちだけで取り組むのはもったいないなと思っています。例えば、小学校の工場見学については、同じ工業団地内の他社も見学してもらうコースも出来つつあります。東山田工業団地には、80社会社がある。連携してプログラムとしてこの地域でこどもたちを受け入れていきたい。その第1歩として、2016年9月に「一般社団法人 横浜もの・まち・ひとづくり」を作ったんです。次の世代にものづくりの魅力を知ってもらうために、みんなで力を合わせていきたい。結果的に、今まではほとんどつながりのなかった工業団地内の企業の横のつながりも生まれ、受発注の取引もうまれつつあり、変化の兆しを感じています。
この取り組みは、積み重ねが大切です。他社も同じことをされることは脅威です。ただ、差別化の唯一の方法は、時間をかけて1つ1つの経験を積み重ねていくことだと思います。社内や社外によい変化を感じているからこそ、気づかれないうちにコツコツと地元で活動を続けること。時差が大差となり、この経験こそが、社員や企業の財産になっていくと思っています。

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五光発條株式会社 代表取締役社長 村井秀敏氏 
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●地域との接点をもちたいと思ったのはなぜですか?
お客さんと社員の満足度を意識したときに、今の延長線上では先がないと思ったんです。私たちは、バネをつくっています。センサーやITの技術が進み、スマートフォンやタッチパネル等が普及してくると、機器に「可動部」がなくなっていく。そうなると、このままではバネの市場は小さくなっていく。もちろん事業としても生き残るための様々な工夫をしますが、すごく儲かっていく訳ではない中で、社員にどう幸せになってもらうのかを考えていました。その中で、他の人を巻き込み、目の前の誰かを喜ばせること、損得ではなく「ありがとう」と声をかけてもらえる存在になることも、自分たちの存在意義ややりがいとして大きいのではないかと思うようになりました。

●具体的にどんな取り組みからはじめましたか?
自分は、自社の事業と近いところからはじめようと、コマ大戦への出展、はじめてのBtoC商品である金属ばねのブロック「スプリンク」の商品開発からはじめました。今までと違う取り組みや挑戦をすることで、はじめは戸惑っていた社員が少しずつ変わってきました。その後、地域とのつながりをもっともっていきたいと地元の小学校と工場見学を企画し、受入れをはじめました。はじめから工場見学をスタートしていたら、上手くいっていなかったと思います。事業の延長線上で、少しずつやることの幅を広げたことで大きな抵抗なくスタートできたのではないでしょうか。

●社内でなにか感じた変化はありますか?
株式会社スリーハイ男澤社長は、とてもピュアだと思う。自分はもっと人間くさいので、下心のかたまりなんです。100年後もバネ屋をやりたい。だから魅力をみんなに伝えたいと思う。どうしたら自分たちのことが伝わるのかを考えたときに、地域にもっと開いていったらいいんじゃないかと思ってやってみた。やってみたら、思ってもいない反響があったりしてやってよかった。そんな新しい発見の連続でここまで続けてきちゃった。
例えば、工場見学に来てくれた小学生たちが、会社の前でほかの友達に「ここすごいバネ屋さんなんだよ!俺知ってるんだ!」とうれしそうに話をしてくれていたり、こども達が、雪が積もったのをみて自発的に工場の雪かきをしてくれたり、今まで大人たちからも敬遠されがちだった住宅地の中の町工場が、うれしい縁をたくさんもらうように変わってきました。
社員は、驚くほど変わりました。今までどこか元気のなかった社員たちが、小学生たちに自分の仕事を説明する顔は、今まで見たことのない笑顔で。わたしが自分で動くのではなく、社員にすべてを強引にでも任せきったことで、自分事としてどんどん企画を改善していってくれています。

●なにか課題に感じたことはありましたか?
私たちは、男澤社長の2、3年後から取り組みはじめました。特にこの数年の差は、大きい気がしますね。先輩方がまっとうな地域とのお付き合いや協働をしてくれていたおかげで、小学校などとのやり取りもとてもスムーズでした。それは、先輩方の取組みが信頼と実績をうみ、学校が企業との連携に好意的だったから、自分たちはとてもやりやすかった。うちでも、インターン生が入ってくれたことが潤滑油になったのは、大きかったです。若い子ががんばっていることで、みんなが応援ムードになった。

●今後の展望、感じている可能性を聞かせてください。
今は、実験だと思っていろんなことに手を出しています。損得ではなく、地域に貢献できることならなんでもやってみる。地域に町工場を開き、なにか使ってもらえるものがあれば地域のみなさんに開放していく。それを進めてみたいと思っています。その先に、「変化しない方が悪」という文化が会社や社員のみんなに浸透していくといいなと思っています。

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男澤社長、村井社長、貴重なお話お聞かせいただき、ありがとうございました。
小さな取組みの積み重ねの中で、社員のみなさんが変わっていく様子や、会社というチームにとって、これらの取り組みがエネルギーとなってきていることが伝わってきました。

《会社概要》
 株式会社スリーハイ
 ▶事業概要:業務用ヒーター製造・販売
 ▶設立:1990年
 ▶従業員数:12名
 ▶所在地:〒224-0023 神奈川県横浜市都筑区東山田 4-42-16
 都筑区や東山田工業団地をものづくりのメッカとして地域ぐるみで発信したい、ものづくりの魅力を
 こども達に伝えたいと考え、2012年より地元小学校などとの連携をスタート。住宅地の中の工業団地
 という背景が抱える「住民との相互理解や共生」という課題に対し、オープンファクトリーや防災MAP
 の製作など、積極的に地域住民やこどもたちとの接点を積極的につくっている。

《会社概要》
 五光発條株式会社 
 ▶事業概要:通信機器、自動車等精密機械全般の精密ばね製造
 ▶設立:1971年年10月1日
 ▶従業員数:35名
 ▶所在地:〒246-0008 神奈川県横浜市瀬谷区五貫目町25-16
 2015年より、「全日本製造業コマ大戦」への参加や、はじめてのBtoC商品として金属ばねブロック
 「スプリンク」の商品開発を通じ、自社の技術を活用し遊び心をもった取り組みをスタート。
 その後、工場見学やワークショップの開催など自社を地域にひらく取り組みをすすめてきた。